JFC国籍確認訴訟の判決

国籍確認訴訟の判決が29日、東京地裁であり、勝訴することができました。
署名など、たくさんのご支援どうもありがとうございました。
原告の母親たちは、みんなとても喜んで泣いていました。

今回の判決は、外国人の母親を持ち、日本人の父親から認知をうけた子ども一般につ
いて国籍を有するとしており、子どもの両親が内縁関係にあるのかなどの事実問題は
争点としていません。また、「我が国との結びつきないし帰属関係が強いこと(中
略)を、父母両系血統主義と並び立つような重要な理念と位置付けることはできな
い」と日本との密接な関係が国籍付与の要件として合理的であるとの国の主張を退け
ました。
弁護士も「判決内容は、原告側の主張をそのまま採用したものと言っていいと思いま
す。「完璧」の一語に尽きます」と言っており、素晴らしい判決だったと思います。

以下、長くなりますが判決要旨です。


判決要旨
【主文】 請求認容(各原告が日本国籍を有することを確認する。)

【事案の概要】
 本件は、フィリピン国籍の母と日本国籍の父との間に出生し、日本で育った各原告
が、出生後に父から認知を受けたことを理由に国籍取得届を提出したところ、国籍法
3条1項の要件を備えていないとして、日本国籍の取得が認められなかったため、父
母の婚姻と嫡出子であること(すなわち準正要件)を国籍取得の要件とする同項の規
定は、憲法14条に違反するなどと主張して、日本国籍を有することの確認を求める
事案である。

【争点】
 本件における主な争点は、国籍法3条1項の合憲性であり、具体的には、同項が、
認知により日本国民と法律上の親子関係が認められること等のほかに、父母の婚姻と
いう準正要件を加えることによって、認知の後に父母が婚姻し、嫡出子となった子
(準正子)と父母が婚姻していない非嫡出子(非準正子)とを区別することが合理的
であるといえるかという点である。なお、各原告の母と日本国籍を有する父が、実際
に内縁関係にあるのか、ないしは各原告と共に家族関係を作っているのかなどの事実
問題は、本件では争点となっていない。

【理由の要旨】
一 国籍の得喪に関する法律要件における区別が、憲法14条1項に違反するかどう
かは、その区別が合理的な根拠に基づくものということができるかどうかによって判
断すべきものである。

二 国籍法3条1項が存在する為、準正による嫡出子は、届出のみで日本国籍を取得
することができるが、日本国民である父と外国人の母との間に出生した非嫡出子のう
ち、父から生後認知を受けているが、父母が法律上の婚姻をしていない非準正子は、
日本国籍を取得することができないという極めて大きな差が生じる。
 そして、同じく非嫡出子であっても、母が日本国民である非準正子及び日本国民で
ある父から胎児認知を受けた非準正子は、出生により当然に日本国籍を取得すること
を考えると、父が日本国民である非準正子に限り、届出をしても日本国籍を取得する
ことができないことは、相対的に見て、極めて大きな不利益であるということができ
る。また、日本国籍を取得することができないということは、基本的人権の保障を受
ける上での国籍取得の重要性や、法の下の平等の重要性にかんがみれば、容易には許
されるべきことではないというべきである。

三1 被告は、準正による嫡出子の場合には、日本国民である父との親子関係が非嫡
出子より強くなっており、生活の同一性も認められるので、我が国との密接な結合が
生ずるものとして国籍を付与するとの立法政策を採ることには十分な合理性がある旨
主張する。
 2 しかし、子が日本国民である親と生活の同一性があるとか我が国との強い結び
つきがあるなどといった事情がなくとも、国籍法2条1項により国籍の取得が認めら
れることがあり、逆にこのような事情があっても、同法3条1項が適用されないとき
もあることを考えると、国籍法の解釈上、我が国との結びつきないし帰属関係が強い
こと、具体的には日本国民である父との生活の同一性等を、父母両系血統主義と並び
立つような重要な理念と位置付けることはできない。
 3 また、今日、国際化が進み、価値観が多様化して、家族の生活の態様も一様で
はなく、それに応じて子供との関係も様々な変容を受けていることからすると、法律
上の婚姻という外形を採ったかどうかということのみによって、父子関係の緊密さや
生活の同一性、まして、我が国との強い結びつきや帰属関係の有無を一律に判断する
ことは、現実に符合しないというべきである。
 4 したがって、被告の上記1のような観点から、準正要件に十分な合理性を認め
ることはできない。

四1 被告は、家族関係に関する我が国の伝統、社会事情、国民の意識等を考慮し
て、法律婚を尊重するという基本理念に基づき、嫡出子と非嫡出子とは種々異なる取
扱いを受けているので、国籍法における区別も、不合理ではない旨主張する。
 2 しかし、日本国籍を認められた上で民法上の差異が生じることと、そもそも国
籍が認められないことは、全く問題を異にするものであり、前者において合理的な理
由があるとしても、それにより後者においても合理的な説明ができるというわけでは
ない。さらに、現在の国籍法は父母両系血統主義を採っていること、また、母が日本
国民である場合や日本国民である父が退治認知をした場合には、非嫡出子であって
も、出生により日本国籍を取得し得ることからすると、国籍の取得については、法律
婚の尊重という理念を重視することはできない。

五1 被告は、偽装認知の防止という観点からも、国籍法3条1項は合理性を有する
旨主張するが、準正要件を不要とした場合に、虚偽認知の危険性が飛躍的に高まるこ
とを示す的確な証拠は見当たらない。また、そもそも、虚偽の認知による国籍取得を
防止すべきであるからといって、真実の認知についてまで国籍の取得から排除するの
は、本末転倒である。
 2 また、最近の諸外国の国籍取得制度の傾向を見ても、これに依拠して、国籍の
取得のために非嫡出子に対して準正要件を要求することが、合理的であると説明する
ことはできない。

六 以上によると、国籍法3条1項が準正を国籍取得の要件とした部分は、父が日本
国民である非嫡出子に限って、大きな区別と不利益をもたらすこととなり、このよう
な区別は、合理的な根拠に基づくものであるとはいえず、憲法14条1項に反する不
合理な差別であるというべきである。
 なお、国籍法3条1項が違憲となる範囲については、準正要件は同項の要件の中で
本来的に可分なものであり、また、同項は父母両系血統主義に立って国籍を取得し得
る範囲を拡充する点が中核となっており、これを制限する準正要件が中核的なものに
なっているわけではないと解されるので、同項のうち、準正要件を定める部分のみを
違憲無効と解すべきである。

7 国籍法3条1項のうち準正要件を定める部分が違憲無効であることを前提にすれ
ば、本件において、各原告は、友好な届出を行ったものといえるから、日本国籍を有
する。

以上